社史漫画は活字による社史とは異なり、主人公のキャラクターや、ストーリーで読者を引き込む必要があります。史実として確認ができたエピソードに加え、シナリオにはエンターテイメントの演出が求められます。歴史資料としての忠実さを取るか、エキサイティングな演出を取るか、どこまで許容するかは企業の判断によります。
事実の羅列は、はじめの一歩
過去、歴史の編纂をしてきた人たちが誰しも悩んできたことと思いますが、歴史書には事実のみ記し、想像で隙間を埋めることすら認めてはいけないものなのでしょうか。
実在する資料、本当に起きた事実、創業時をはじめとした時々の当事者の感情、会社の外で起きた事件、事故、震災により影響など、これはこれでしっかりと把握しておく必要があります。どんな社史制作においても、初めの一歩として年表のような形や、写真、取材による一次情報などを整理しておくことは、最低限必要な作業になります。
(できれば他人が見ても分かるようにファイリングすると良いでしょう。社史制作後、数十年後にもしまた社史の制作を行う際にも重要な資料となります)
年表ではなく社史というストーリー
その後、実際の社史として一冊にまとめるにあたって、ただ単に肉厚な年表の形、という訳にはいかないでしょう。会社が創業時(もしかしたら創業前)からずっと今まで一本の糸のようにストーリーが続いていなければ社史の体を成しません。
そこで、社史編集の担当者によって、また時には経営者たちによって事実の点と点を結ぶ空白地を埋めていく必要が出てきます。きっとこういう流れで次のステージに進んだのだろう。といった想像を働かせることになります。
社史漫画らしい誇張、脚色、主人公・・・
事実の点と点をむすぶ空白地を、どのように埋めていくかがまさに社史漫画の世界観につながります。登場人物の表情、リアクションを大げさに表現するのか、身体のサイズ、着ている洋服のイメージすら変えてとんでもない悪人を描いたり、本当は言葉にしていない心の声をセリフにし、実際には流していない涙を描くことで読者の心を刺激する演出をしてみたり。
登場人物の誰の視点で描くかでも大きく違います。それは経営者の目線なのか。それとも、新入社員の目線なのか。同じエピソードでも主人公を誰にするかで読み手の共感が変わってくることでしょう。
「この社史はフィクションです」
場合によっては、「この社史はフィクションです」と最初に断ってしまって、シチュエーションごと舞台をNYにしてみたり、戦国時代に置き換えてみたり、思い切ったエンターテイメントに舵を切るのもチャレンジングで面白いかもしれません。(実際に、日清食品さんはそうしていました)
目指すエンターテイメントの匙加減の見つけ方
社史を漫画で描くにあたって、ベースとなるのは歴史漫画ではないでしょうか。小学館や講談社などから出ている日本の歴史や、偉人伝などです。是非、社史を漫画で作ろうと検討されているのであれば、改めて一読いただくことをおすすめします。意外とエンターテイメントの工夫がされていることに気づくと思います。
その上で、他社の社史漫画や、自分が好きな漫画のどういった部分が読んでいて楽しいと感じるかを意識してみると目指す社史漫画のエンターテイメントの匙加減が見えてくると思います。
神奈川県立川崎図書館他では、さまざまな企業の社史を所蔵しています。社史制作前に一度足を運ぶと参考になりますよ!社史漫画制作について、ご不明な点があればお問合せページよりご相談ください。