社史作りが決まったらまずは、完成までの流れをシミュレーションした上で(詳しくは「企画から製本まで:誰でも社史作りの工程がわかる、5つのステップ」を参照ください)、最初にとりかかるといい4項目について紹介します。
・おおよその予算
・納期(◯◯周年の設立記念日など)
・目的(一番大切にしたいこと)
・完成イメージ
漫画の社史でも、テキストと写真による社史でも、この4項目を決めておくことでこの後のステップがスムーズに進行していきます。それでも、
「う〜ん。分かっているけれど、見積りを見てみないと分からない…」
という気持ちも分かります。そこで、各項目について予備知識がなくても誰でもざっくりとイメージできるようまとめてみました。
1)おおよその予算
いきなり予算についてです。
「社史なんて作ったことないから、いくらでどんなものが出来るか分からない」
「見積りを見てみないと想像もつかない」
というのが普通だと思います。100万円なのか、300万円なのか、500万円なのか、1,000万円、2,000万円・・・と何が何だか分からないと思いますので、それぞれの価格帯でどの程度のものができるか見てみましょう。もちろん、各業者さんでばらつきは大いにあると思いますが、業者さんと話す際の予備知識になるのを期待しています。
100万円
100万円ですと、ちょっと豪華な会社案内のイメージかと思います。テキストと写真、年表などが中心で、A4サイズの20-30ページくらいの中綴じ冊子のような感じでしょうか。ただその分、印刷・製本代も一般的な冊子の部類に入りますのでリーズナブルです。制作費と別に考えたとしても、ラクスルさんなどを使えば500部作って10万円しないと思います。
漫画で表現しようと思えば、例えば、全体20ページのうち半分を漫画にし、残りを写真、テキスト、年表などを加えるようなA5サイズくらいの小冊子にしてはいかがでしょう。A5サイズ、20ページくらいの冊子を1,000部くらいまとめて印刷すれば、1冊あたり40-50円で出来ますので、不特定多数のお客さまに配布するようなアイテムができそうです。
300万円
300万円になると、50-60ページの薄いながらも無線綴じの背表紙がついた冊子ができるかと思います。硬い表紙という装丁は難しいですが、ムック本のような社史ができると思います。印刷・製本は、数百部であればA4、B5サイズくらいで1冊あたり150円〜200円くらいで出来そうです。
漫画で表現するとなると、ごあいさつ、年表といった最低限の情報を除いて、説明中心になってしまうかと思いますが50ページくらいの全編漫画の冊子タイプのもの、もしくは、導入部分を10ページくらいの漫画にして、残り40-50ページを漫画内のキャラクターたちを散りばめながら会社の歴史を紹介していく。といったものもできそうです。
500万円
500万円くらいになると、背表紙が1cmくらいの背中の硬い書籍の形の社史ができると思います。ページ数にして、150ページくらいになると思いますので、写真資料や、関係者のインタビューなど内容もそれなりに濃いものになってくると思います。
漫画で表現する場合、全編漫画にする場合は100ページくらいになるかと思いますが、漫画だけで会社の歴史や魅力を十分に伝えるには少し足りない気がしますので、漫画は75ページくらいに抑えて(それでも例えば創業者を主人公にした創業〜現代までのストーリーは描けます)、テキストや写真で補っていく形がよろしいかと思います。
1,000万円
1,000万円くらいの予算があると、厚さ2-3cmの骨太な社史ができるようになると思います。その分、創業家の関係者をはじめ、多くの人たちの協力が不可欠になってくるでしょう。また、折角であれば装丁も立派にしたいです。そうなりますと、印刷・製版代も1冊あたり1,000-2,000円くらいかかりそうです。
漫画の場合ですと、ちょうど単行本1冊分くらいの分量になります。ここまでくると、創業期、中興期、現代、と三部くらい、それぞれ主人公(キャラクター)を立てながら起承転結のストーリー、業務上のトラブルや成功談などのサイドストーリーを含みながら十分に会社の歴史や魅力を伝えられる漫画ができると思います。漫画単行本のスタイルの場合、印刷代も昨今の物価上昇で高くなってきてはおりますが、22年10月現在で、500冊の製本におおよそ1冊あたり500円ほどでした。
2)納期(◯◯周年の設立記念日など)
どのタイミングでお披露目をするか、もしくは、この日までに完成させなければならない日があるようであれば確認しておきたいところです。とはいえ、社史の制作は思いがけず時間がかかります。少なくとも1年から2年、ボリュームの多いものでは4-5年、さらにはそれ以上の期間を想定して進める必要があるかも知れません。
絶対的なお披露目の日にちがあることで、スケールの限界が生まれる可能性がありますので、どの程度優先するか確認しておきましょう。
3)目的(一番大切にしたいこと)
今回、社史を作る目的はなんでしょうか。
誰のために、どんな効果、課題解決を狙って、社史を作るのかを明確にすることで、社史の型や構成がより具体的に見えてきます。
今回の目的が『創業者である会長が高齢を理由に勇退されるのに合わせて会社の成り立ちを振り返る』であれば、会長の人生と会社の成長とシンクロするような内容にすると良さそうです。『創業期を支えたレジェンド社員と若手との接点が減ってきてしまい、会社の企業理念や精神、文化的な伝承が希薄になってきているのを解消したい』ということであれば、特に若手社員が手に取って読みやすそうな社史を作ってはいかがでしょうか。
人生のほとんどをアナログの本を読んで過ごしてきた世代、小さい文字が読みづらくなってきた世代、空いた時間の多くをスマホを見て過ごす世代、家ではNetflixの動画を楽しむ世代、色んな生活スタイルや嗜好であふれた時代です。すべての人に受け入れられるコンテンツはないと言えるでしょう。
ですので、誰のために、どんな効果、課題解決を狙ったものかを考え、その中でもっともプライオリティを置いた目的にそって企画をかためていくと良いでしょう。また、その方が次のステップである外部業者からも、的を得た提案があがってくると思います。
4)完成イメージ
完成イメージ。ここははじめは雲をつかむような話だと思います。私たちは漫画を使った社史をメインにしておりますので、詳細は他の社史制作会社に譲りますが、
- 歴史資料、百科事典
- 会社概要、商品紹介
- 雑誌、ムック本
- 読み物、小説
- 漫画、イラスト
といったタイプがあります。また、これらを組み合わせる方法もあります。例えば、漫画+ムック本、ですとか、漫画+歴史資料ということもあります。私が神奈川県立川崎図書館で拝見した博多明太子のふくやさんの社史はまさに、漫画と歴史資料とが合わさった素晴らしい社史でした。
漫画による社史作りをメインにお手伝いさせていただいていますが、漫画だけでなく、プラスアルファの企画ページ(座談会の書き起こしなど)を加えることで立体的な社史になることもあります(このパターンの参考は、テルヤ電機さんが良い例でしょう)。
とはいえ現実的には99%近くが歴史資料的なものに近い社史の世界ではありますが、面白い社史、楽しく読める社史を目指されるのであれば、神奈川県立川崎図書館などに一度足を運び、(その中で宝探しのようになってしまうかも知れませんが)自社が目指す方向に近い事例を探してみるのも良いかもしれません。
漫画を用いた社史を検討されている場合には、社史作りのナビゲーターとして最後の完成イメージに適した資料のご紹介や、ご予算に合わせたご提案をさせていただきますのでご遠慮なく下記よりお問合せください。一緒に面白い社史作りができることを楽しみにしています。